2006年6月24日土曜日

蕭白にぶろーくんはーとだ。

東京国立博物館テーマ別講演会「江戸時代後期の絵画」全四回の今日が最終回。
本来前期、中期、後期で区分される江戸期をあえて二分して後期とした充実した内容。
第二回の南蘋派だけは所用により参加できなかったのが、よくよく考えてみたら、
今回の特別展に先立つものとしては外してはいけなかったのか・・・と少し残念。

本日第四回は狩野博幸(Kano hiroyuki)同志社大学文化情報学部教授
元々はこの方、京博の名誉館員で、彼の京博で2000年に開催された 「若冲―没後200年―」の企画者だそう。
そこでほーっとか言ってる場合ではなかった。
昨年同じく京博での「曾我蕭白-無頼という愉悦-」、その上、2004国立科学博物館での「STARWARS SCIENCE andART」の企画者でもあると・・・。このSTARWARSの企画は科博での開催自体のハードルが高かったことを当時聞いてる。この数年博物館が面白いのは、こういった、分野を超えた企画で人に目を向けさせる発想力をもったcuratorが活躍している所為なんですね。


講演の内容は、当然楽しい進行で最後まで背筋を伸ばし聴き入るばかり。
京都の文化の風潮を福岡から京都へ入洛されたご自身でのあの都市ならではの実体験を交えつつ。
※切り出しに語られたいくつかのエピソードに連れと肩を小刻みに揺らしてうなずく。
復習がてら:
18世紀の京都の文化を背景にした絵画の傾向を大陸からの儒教思想と
その派生から受けた影響による絵師達の進化について。
明代の文学思想、儒教から派生した陽明学とその左派による論語の主張
憤りの表現をもつ曾我蕭白
その反体制が派生し、天台僧の六如(りくにょ)が見たままの情景を詠う写生詩
写実性をもって動植物や山水景を墨絵で描く応挙
そして、その遠心性:独創性、個性に一切の踏襲をもたない若冲
それぞれの観賞の手がかりとなるバックグラウンドを踏まえて、その後スライドを用いた講義となる
二部制のような展開。それぞれに集中できてよかった。

極最近発見された応挙の群鶴図屏風(京博)のすばらしいこと。今年のお正月に公開されていたそう。
本物観たい!来年の新年は京都か・・・。?。

お馴染みとなりつつある若冲の彩色画の数々もいままでとは異なる視点からの
毒舌を交えた鋭い指摘がマンネリ感を一掃させてくださり、流石さすが。
どうやら一昨日のジーコジャパンの醜態の鉾先が若冲にむいていたような気もしないでも・・・笑。
愛だなぁ〜。これも。

なにげにトリをかざったのは「蕭白」ああ、ここに思い入れのポイントあったのですね。
数々の展覧会で、立ち止まる率は確かに多かった「蕭白」だけど、なかなか突っ込む機会がなかった故に、
今回の影響は大きかった。先生の「蕭白」への愛に横恋慕するばかりだ。
ちょっと興味の方向が変わりはじめてしまいました。


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曾我蕭白
寒山拾得図屏風


大サービス級多数のスライドを絵解きされる中、
蕭白の四季山水図。
墨の濃淡により絹地の余白を使った加減で雪を冠った鳥居を描く表現を
「僕ねぇ、これを観る度、嬉しくなるんですよ」
とつぶやきしみじみ紹介されていたのがとても印象的でした。
愛だなぁ〜。

狩野先生は京都では人気だそうで、京博での講演はけっこうな人出になるそう。
東京はまだやはり出遅れてるのかな。
先週の抱一のほうが結構な人出だった。これはお江戸のせいかな。

帰りがけにミュージアムショップの書籍コーナーで、先生の著作を探していたら、
蕭白に関する講談社からの著作は取り扱いが無い上にどうやら高価らしく、
落ち着いた感じの女性の担当者が昨年の京博の蕭白展図録をお勧め下さいました。

図録は最新の画質、論評がテンコ盛りで断然お得。確かに。
さりげなくお勧めいただきましたが、大感謝です。
この後おけいこだし。。と抱えたままこまっていると、「お取り置きもしますよ」と
行って下さる。でもそのコトバで持って帰る決意。「いちごちえ」ってこのことだ。

蕭白展図録
カラー図版280頁含む400頁overの図録が2500円
しかも教授(sakamotoぢゃない)の愛と思い入れたっぷり。重量もたっぷり。
まくら元において寝ております。


目を見張る伊藤若冲の動植物絵   日本の美術(no.462)

京博のサイト内刊行物のページにてコラムもいくつか。
[よみもの]
もともと映画への傾倒が深かったとのことで「黒澤明追悼」も書かれてたり。

東京国立博物館テーマ別講演会「江戸時代後期の絵画」全四回
2006年
5/20(1)変容する江戸絵画
6/10(2)南画と南蘋派
7/17(3)抱一・其一の活動とその背景
7/24(4)18世紀京都の絵画−その遠心性と求心性−


プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展
平成館 2006年7月4日(火)〜8月27日(日)

2006/7/4〜8/27 東京国立博物館
2006/9/23〜11/5 京都国立近代美術館
2007/1/1〜2/25 九州国立博物館
2007/4/13〜6/10 愛知県美術館

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若冲:鳥獣花木図屏風
カリフォルニアにあるプライス邸のバスルームは
この鳥獣花木図屏風が壁面いっぱいにタイルで模してあるんだそう。
悪趣味な銭湯みたいだ。





オボエガキ:
京の酒見世